2012年2月24日金曜日

09 February 2012 失うもの

任地に戻ってみると、昨日から停電、断水が続いているとのこと。
どちらも全く復旧しないまま3日目に突入した。
供給が切れた原因は不明。

地元の人たちもさすがに困っている。
町では井戸の周りに人だかり。
灯油タンクの入れ物に水を入れて運んでいるたくさんの子供の姿。
けれども、皆が一気に汲んだので3日目の昼には井戸は完全に涸れてしまった。
自分の家の貯水バケツの水が切れたら、井戸水を使おうと思っていたのでびっくり。
乾季、そして水事情に恵まれないこの地域の問題があらわに。

職場近くのカフェ(?)でコーヒーを飲んでいると、立ち寄る地元の人たちが口々に困った困ったと言っている。
「噂では一週間くらい戻らないらしいよ。」
「どーすんだー、俺たちみんな死んじゃうぞー!暑ッいしさぁ~!」
けれども、このベナン人男性の声の調子に悲壮感はない。
そして、彼はこう続ける。
「でも、俺は泣かない。笑うんだ。困難なときは笑うんだ。」
見るとこの男性は、足が不自由な様子で松葉杖を持っている。
後でカフェの店番のマダムから、彼は2年前のバイク事故で足を骨折したと聞いた。
直後は見ているほうも辛かったという。
でも、今はああして歩けるほど良くなったのよ、とマダムは笑う。
ベナンの人はいつも笑顔で大らかだよねと言うと、そうよ、しょんぼりしてても何も変わらないもの、とマダム。

家に帰って警備員にそんな話をしていると、彼も同感だと言う。
ベナンの人はこう考えるんですよ、と彼は続けた。
「お金をなくしても、何も失わない。健康を害しても、少ししか失わない。でも、気力をなくせば全てを失う。」

彼らの言うとおり、気力が尽きない限り、自分が自分である限り、本当に失ってしまうものなど何もないのかもしれない。
心にずしんと響いた。