2010年12月5日日曜日
20 nov 2010 活動の話
写真①視学官事務所からみた外の光景。向こうから歩いてくるのが配属先長の視学官。
写真②私の配属先の視学官事務所。
お仕事の話。
私のここでの任務は「啓発による児童の健康状態の改善。それによって小学生の修業率を上げること。」
簡単にいうとどういうこと?
ベナンは何年か前の改革によって、みんながタダで小学校に行けるようになった。また、行かなきゃいけない、と義務化された。
だけど、卒業できなくて途中でやめてしまう子供が多い。
理由はたくさんある。たとえば親が子供にうちの畑仕事や商売を手伝わせたいので学校に行かせたがらないとか。
そんな数ある理由の中の一つとして、病気によって学校を休んで授業に遅れをとりやめてしまう子供がいることにベナン政府は着目している。
そこで、児童が病気にならないための取り組みを強化しようというプログラムがベナンにはある。
病気の内容はさまざまだけど、マラリアや不衛生によって引き起こされる感染症。下痢とか寄生虫とか。そういうものがあげられる。
だから、どういう形の活動かは問わないので児童がこういう病気にかかるのを少しでも減らすこと、というのが私の任務だ。
もちろん医療行為ができるわけでも薬や設備を提供できる立場でもないので、おのずと活動は啓発(児童や学校関係者の意識改善)を通してということになる。
つまり、ご飯の前やトイレの後には手を洗いましょうとか、トイレは草っぱらではなくてトイレでしましょうとか、どうして汚い手でものを食べたら下痢をするのか、とかそういうことを教えたりすることを通して、人々に習慣を見直してもらう。
また、現状では衛生環境を整えることの重要性を先生たちがあまり理解していないから、学校にトイレがなかったり、あっても使えない状況のままほったらかしにされていたりする。
学校に手を洗う水がなかったり石鹸がおいていなかったりということも一般的に見られる問題。
先生の理解度を子どもの習慣は反映する。衛生環境の悪い学校では、子供は手を洗ったりトイレを使ったりしない。
そういう学校には病気の子供が多く、授業中の教室や休み時間の校庭で吐いている子供がいたりする。
だから、学校の衛生環境を整える必要性を学校関係者に呼びかけたりすることも啓発内容としてあげられる。
じゃあ、どうやって「啓発」を行っていくのか?
私が担当する地域には公立だけで150の小学校がある。
ひとつひとつの学校を訪れて児童に直接、衛生指導をする?
そしたら、たぶん任期の2年間で一校につき一回か二回の訪問指導をしたら終了だろう。学校は20キロ圏内に点在していて行くだけですごく時間がかかる。移動手段は自転車のみ・・
それに、自分がいる2年間が終われば、また学校の衛生問題について取り組む人がいなくなってしまって一時的な改善も続かないのでは?と思う。
それならば、地域でこの課題(「学校保健」と呼ばれる課題)が継続的に取り組まれる体制をつくることが効率的なんじゃないだろうか。
そんなわけで、考えた作戦が、
「地域で学校保健にとりくむ指導者を育てよう。継続的に学校保健にとりくむ組織体制を地域に作ろう。」
ということ。
具体的には、
①地域に「指導者学校保健委員会」を発足させ、現状の問題解決や改善にあたる役割を負わせる
(委員会は、視学官事務所(教育省の地方事務所)の視学官(その組織のトップ)、保健センターの衛生担当者、地域PTA会長、有志の小学校校長約10名で組織)
②小学校校長に対して学校保健に関する講習を行う。彼らを中心とし各校の環境整備、教師や児童に対する指導を行ってもらう
地域の指導者が学校保健の重要性を理解したり、彼らがこの課題に取り組む体制をつくることで、トップダウンの形で現場に反映させようというもくろみだ。
①は同じ課題にとりくむJOCV(ベナンでは13人いる)の活動の中で前例のない取り組みなので、どうなるかまだまだ未知数。課題も山積み。
とにかく、いつかいなくなるJOCVなしでも、地域で学校保健の取り組みが継続され、持続的な改善がなされていくこと、これが私の願いだ。
日本人のいた2年だけは学校がきれいだった、というのではあまり意味がないと私は思うから。
*JOCV=JICAボランティアのこと