2011年4月13日水曜日

13 April. 2011 ドタキャンとベナン人


今日は出鼻をくじかれた。
予定していた学校のSupervision(査察)が今日もあるので、いつもどおり保健センターの衛生管理責任者(主任)のオフィスの前で彼と彼のアシスタントを待つ。
9時。既に学校での査察が始まる予定時間。なのに、まだ学校に向けて出発もしていない。
ベナンでの約束の時間はゆったりめだけど、それでもいつもはこの時間にはさすがに出発している。
彼のアシスタントはいつもどおり大遅刻なのだろう、来ていない。おとといもそれで主任の怒りをかったばかりなのに、なぜ来ない?

主任に電話をしてみた。
ボンジュ~ル、コモンサヴァ~?(おはよう、元気?)とご機嫌の返事。
それは嬉しいことだったけど、今どこですか?Supervisionは?と聞くと、
「あ~!そうだそうだ、査察か!昨日からずっと仕事でアイジェソ(結構遠い村の名前)にいて、帰ってきてないんだ!言うの忘れてた。プログラム組み直そう。」と言う。
一応、ちょっとバツが悪そうな様子だけど。
・・まじっすか。結構それは気まずい状況ですよ、主任。
彼も知っての通り、監査を予定している学校にはすべて前もって視学官事務所から公式の令を出しているし、村の権力者やPTAも呼ぶようにと書いている。
さらに、昨日は同じ学校の別のグループの校長にもたちあってもらうように電話してしまった。
私たちを待つ、校長たち。既に呼ばれてしまって学校でたむろっている村人たち。
最悪の光景が私の頭の中に。ドタキャンはまずいやろ~
校長たちの信用を失うのがこわかったので、主任に直接校長に電話して説明してくださいとお願いした。
彼は、保健センターの一部署の責任者だし、その地位と長年の働きによって校長たちからの信頼を得ている。
だから私が電話するより、その方がいいと思った。
主任は「わかったわかった。電話番号を教えて。」とすんなり承諾し、電話しておくと言った。

これだけ公式に予定されている仕事でも、こんなことになるのか。
やるって言ってやらなかったら、信頼を失うんじゃないのか。
狼少年的な感じになって、次から軽視されたり。
そんな危惧が残って釈然としない。
でも同時に、ベナンでのことだからこういう懸念も私がドタキャンにイライラしたり意気消沈していることも、たぶん的を得ないことなんだろうなと頭では思ったりもした。
一年ここで働いているので、こういうことがまれではないことも知っている。
自分の感覚が日本人としてのもので、ベナンでは違う常識とか信頼関係の作り方があるんだろうとも漠然と思う。
でも、未だにそれがどういうものなのかが、はっきりわからない。
ここの社会では、常識として何が許されて何が許されないのか。
人はどういう理由で他人を信頼して、どういうことで失望するのか。
大事にしなければいけないところ、外してはいけないポイント、そいうのが一年たった今もわからない。
人付き合いに関する礼儀とかルールとか、そういうベナン人の常識が霧の中のようにぼんやりとしか見えない。
たとえ表面的に少しはわかっても、感覚として共有できない。
だから、きっとそうだろうと自分を納得させても、どこかで自信がなくてイライラしたり不安にかられたりする。

主任は電話したかなと嫌な予感がして、校長に自分も後で確認の電話をした。
電話はきていないと校長は言う。
やっぱりね。もう、あまり驚かない。
きっと、主任は一度かけたけどつながらなかったからまあいいやと思ったとか、そんな感じなんだろう。
じゃあ、校長たちは何の連絡もなく村人と待ちぼうけなの?あり得ない状況だね、もうどうすんの。
それで、今日の中止の件を伝えると、校長自身も学校にいないうえに今日の予定のことを知らなかったという。
さすがにこんな人は今まで監査した10校くらいの人たちの中で初めて。
令状が届いていないというけど、なんで?確かに同じ学校の別のグループの校長が、届けるように視学官事務所職員に言われて、それを事務所から持って行ったのを私は見た。

もう訳がわからない。
私一人が心配をし、焦り、すまなく思い、空まわり。
こんな場面で、私はやっぱり悲しいくらいに外国人、よそものだ。
ベナンの文化や常識が、遠く遠く感じられる。

最後に誤解のないように書いておく。
私は彼らのことをちゃんと物事をきちっとやらないと怒っているのではない。
日本人の一般的な行動がすばらしいのに比べて、彼らはダメだ、とかそんなことを言っているのでもない。
ただ、彼らと自分ではだいぶ常識が違う、と思っただけだ。
それによって事を予測しきれなかったり、また予想の範囲内でもどううまく対処していいかわからなかったり。
そして、その違いを感覚として理解しきれず意気消沈したり機嫌を損ねたり。
自然に受け止めきれない自分のキャパの小ささが、すこし腹立たしかったということ。

*写真:主任こと衛生担当責任者と彼のアシスタント。大切な仕事仲間です。出発前の保健センターで。